平成29年度教育検証プロジェクト(第2回)

1 検証の目的
 本校の生徒が職業自立を行いながら社会参加・社会貢献できる力をつけるために(本校のミッション)どのような指導が必要か検討する。

2 検証方法
 平成29年度卒業生の2年生時2月の実習の評価及び3年生時7月の実習の評価と平成29年度末に本校職員に協力していただいたアンケート結果を分析する。
 ①2年時2月の実習の評価及び3年生時7月の実習の評価を比較検討し、共通目標に掲げている項目がどの
  ように評価されているのか検討する。
 ②企業側の評価を参考に企業が生徒のどのような行動に注目しているか検討する。
 ③本校の職員が考える本校生徒の実態と働くために必要な力を検討する。
 ④企業側が本校生徒が実習を行った際に困難であったと感じた評価項目について検討する。


3 結果及び考察
 ① 共通4項目に関する企業の評価

 
 
 
 
 
 【考察】
  共通目標に関しては平成29年度より指導を開始したところであり、7月の評価も指導開始してから
 数カ月しか経過していないが、少なくとも変化は生じていることが今回の結果より分かった。
  3年生の7月の現場実習は生徒本人も就職を意識して実習を行っているので、指導の効果だけが反映さ
 れているとは言えないが、数値だけ見ると良い変化が生じている。「挨拶・返事・言葉遣い」に関しては
 後で述べる企業側が生徒の行動で注目してみている項目でもあり、就職を決定する7月の時期は企業側も
 厳しい評価をしてしまったため2月と7月とを比較すると評価が少し下がったのではないかと考えられる。
 逆に丁寧に指導を行ったためシビアな評価を受けてもほとんど評価が下がらなかったのではないかと考え
 られる。
  一方で、他の項目については全て評価が高くなっている。「報告・相談」で7月の評価に×があるが、
 これは就職を考える際に企業が厳しく評価したものであると考えられる。「時間の意識」については2月
 と比して×の評価がなくなり、○の評価が増えている。「身だしなみ」に関しても◎の評価が増えている。
  以上のことより、短い期間ではあるが4つの共通目標の指導を実施したことへの成果は見られていると
 考えられ、今後も指導を継続していくことが必要であると思われる。


 ② 企業が評価項目以外に書いていたコメントについて

 

 

  【考察】
  評価の際に企業がコメントを記載してくださったり、あるいは聞き取りを行った際に言われたりしたこと
 を分析することで企業がどのようなところに注目して生徒を評価しているかがわかるかと思い、検討した。
  同じ生徒を評価している企業が多いのだが、注目していることの優先順位が異なっていることがわかっ
 た。これは、7月の実習は2月の実習と異なり、就職を決めるための実習であると企業側も意識したため就
 職した時のことを考えた評価が行われたものだと考えられる。しかし、共通して言えるのは「挨拶、返事、
 言葉遣い」、「指示理解」、「仕事への積極性・意欲」「職場でのコミュニケーション」については企業側
 が高い関心をもって注目していることである。また、この分析結果より、それぞれの企業は自社の専門的な
 仕事の内容についての能力を求めているところはほぼなく、働くことについての基礎的な力、「働く意欲」
 や「指示を理解する力」、「他者とのかかわり」というような力を求めている。
  これは高校生に企業が求める人材の調査とも似ている。高校生に企業が求める人材としてアンケートが取
 られている。全国的な調査では、第1位「協調性」、第2位「コミュニケーション力」、第3位「基本的な
 生活態度」、第4位「責任感」、第5位「積極性」となっている。(平成21年度 東京経営者協会より)
 高知県の調査(平成25年)でも第1位「就労意欲」第2位「コミュニケーション力」第3位「積極性」第
 4位「責任感」第5位「体力・健康」となっており、全国でも地方でも高卒者に専門的な技術や能力を求め
 ている企業は少ない。
  本校では専門教科や職業自立の時間を通して、また、「心の道場事業」において「働く心構え」について
 指導するようにしている。また、本年度経営方針の重点項目の「教職員の授業力の向上」において「自立活
 動」を掲げており、コミュニケーションについても充実した指導が行える環境にあると言える。そして、「
 挨拶、返事、言葉遣い」については専門教科の共通目標として掲げ、引き続き指導をしていく必要があると
 言える。


 ③本校職員の生徒の評価と働くために必要な能力
  ③-1本校職員が本校生徒がまだ目標に達していないと感じている項目について
   (△と×の評価が多かったもの)
 

 【考察】
  専門教科で取り組んでいる共通目標の中の3つが入っており、指導継続の妥当性が挙げられる。
  一方、職員が目標に達成していると感じている項目(◎と○の評価が多かった項目)は、「職業生活
 に関すること」(健康管理、身だしなみ、整理整頓)と「基礎学力」の領域であった。

 

 ③-2 本校職員が感じている働くのに必要な力
 

 【考察】
  本校職員が働くのに必要な力として専門的な技術力よりも働くための基礎的な力を大切だと思ってい
 る職員が多いことが分かる。これは企業の視点とほぼ同様である。一方でその項目が異なるのは企業側
 よりも生徒の実態がより的確に把握できているため生徒の実態により即した項目が挙げられているのだ
 と思われる。
  これらの指導実践ができることを考えた場合特に「専門教科」「職業自立」「自立活動」での指導の
 充実を考えていく必要があると考えられる。

 

 ④ 企業の評価
  実習の評価は基本的には高めに評価していただいているが、その中で△、×の割合が高かった項目を
 2月、7月と挙げた。
 

 

 【考察】
  2月と7月では同じ生徒を対象に評価はしているが、就職の決定を目指した中での評価と実習の一つ
 として受け入れている中での評価のため多少項目が異なったものと考えられる。しかし、共通して本校
 生徒が難しいと企業側が感じている項目が多々ある。この項目に着目して考えると知的障がいに起因し
 て困難さを生じているものが多いのではないかと考えられる。これらは生徒本人や本校職員がいくら努
 力しても達成しにくい難しさがあると考えられる。これらを改善するための方策として企業側に軽度知
 的障がい者への理解・啓発を行う、そして、適切な支援方法を伝えることによって改善するものと考え
 られる。

4 まとめ
 就職に向けて生徒を指導していくことは本校のミッションであるため、本校の研究も進路部との連携が必須であると考えられる。また、生徒の就職は学校教育活動全体で取り組んでいく必要があり、学科部及び学年部との連携も必須である。つまり本校研究は色々な部と連携を取りながら進めていくことが何よりも必要であり連携なくしては取り組めないものと考えられる。昨年度のアンケート結果及び分析から今年度は以下のように研究を取り組んでいきたいと考える。
 ① 専門教科での共通目標の継続指導
   ⇒授業公開を通して教職員の専門性の向上を図る。
   ⇒グループワークを実施し、専門教科におけるよりよい支援方法について検討する。
   ⇒アンケート結果のさらなる分析及び実習評価について検討する。
 ② コミュニケーション力の向上
   ⇒自立活動の指導の充実(コミュニケーションに課題を生じる生徒の少人数指導を試行する等)
   ⇒授業の公開を通して教職員の専門性の向上を図る。
 ③ 生徒の実態把握
   ⇒企業に向けて軽度知的障がいの啓発パンフレットを作成する。
   ⇒進路部と連携し必要な生徒においては発達検査等を実施し、客観的な実態把握を行い、支援について
    検討する。(生徒が希望する職業に就くための支援は何か)
 ④ 「働く心構え」を培う(職員研修)
   ⇒ソーシャルスキルを培うための実践について学ぶ。
   ⇒自己肯定感及び愛着問題等に関する研修を実施して、職員の専門性の向上を図る。