鳥取東高校では,生徒の多様な興味関心そして進路志望に応じた自主的な取組を奨励しています。「まずはやってみる」ことで思いもしない視点を得ることがあるし,目標達成には直接的には関係ないように思われることから大きなヒントを得ることもある…。そんなことを背景にもした奨励です。
こうした取組を奨励する中で地域連携として企画しているものに,本校に近接する修立小学校とのコラボレーションがあります。それが,修立小学校「サマーボランティア」です。
夏季休業中,希望する本校生徒が修立小学校に出向き,小学校に登校して夏休みの宿題等に取り組む児童の学習支援をするというこの企画。毎年,たくさんの生徒が応募し,自分の興味関心や得意を生かした自主的なボランティア活動として取り組んでいます。今回はその模様をお伝えします。
この企画は,修立小学校の先生方との事前協議を経,修立小学校サポーターの方々とも連携した上で,鳥取東高校全学年・全学科で希望する生徒を対象として実施しています。主に次のような思いを持つ生徒を募集しています。
▶将来,学校教員としての活躍を志している者
▶教育やこどもに興味関心があり,そうした自分の興味関心を踏まえた社会貢献や地域貢献に取り組みたい者
「学校教員を志望する」「教育あるいはこどもについて考える」のと「実際に教育活動に取り組んでみる」のとでは大違い。鳥取東高卒業後の進路志望の別によらず,高校時代に,地域の方々のご協力を得てこのことを実感できる…。これは本校のどの生徒にとっても,キャリア形成上とても大きな意味・意義を持つと考えています。
本校では,将来学校教員としての活躍を目指す生徒を対象とした通年プログラムとして「次世代教師塾」も実施しています。修立小学校「サマーボランティア」では,生徒が先生役を担い,国語または算数を児童に直接教えるという内容になっていることから,この「次世代教師塾」との親和性が高く,いずれの事業にも参加をするという生徒が少なくありません。
〈令和6年度「次世代教師塾」の1シーン(講師:本校OBOGの現役教員)〉
果たして,様々な思いや期待を高め,今夏もたくさんの生徒が「サマーボランティア」に参加しました。
久しぶりに味わうこぢんまりとした机と椅子。少し緊張した面持ちで児童が自分(達)を見つめる中,「自分(達)の小学校もこんな感じだったな」とちょっとした懐かしさも感じながら自己紹介をし,いざ,ボランティア活動がスタート。
そこは,大学を卒業したわけでも教員免許を有しているわけでもない自分が児童から「先生」と呼ばれる世界。それまでの日常では感じたことのない,何とも言えない感覚を覚えつつ,児童から発せられるその一言に自ら責任感を奮い立たせ,東高生による個別指導が始まりました。
果たして,教え方ひとつで「わかる」ようにも「わからない」ようにもなることを,生徒は身をもって知ることになりました。児童の個性や発達段階をできるだけ早く察知し,即興的にそれらにふさわしい教え方をする技量が求められることも生徒は実感。さらに,集中力の持続する時間が高校生のそれほどには長くない児童の学習意欲をどう持続させるか…にも翻弄された東高生でした。
そんな東高生を救ったのは…他でもない修立小学校の児童の「わかった,先生!」の一言。「どう教えればこの児童がわかるように,できるようになるだろう」とあの手この手を使いながら指導に取り組んだ生徒にとって,その瞬間は心の底から嬉しく,達成感のあるものでした。そしてその瞬間こそが,教員の喜びに他ならないことも実感しました。
ボランティア活動を終えた3年生からは次のような声が寄せられています。
▶児童の性格はそれぞれでしたが,勉強に向かう姿勢は高校生より熱いものを感じました。この姿勢は,勉強を苦だと思っていないからこそだとも感じました。教える側の教員が,学ぶことは楽しいことだと教えたり,楽しそうに授業をしたりすることが本当に大切なんだと痛感しました。
▶こども同士が教えあう姿や苦手な問題にも挑戦する姿に触れ,こういった学校生活の中で協調性を身につけて素直に成長していくのだな,と,学校という存在の重要性を痛感したとともに,こどもたちを心の底から応援したいと感じました。また,教えるということはきっと,教師自身にとっても毎日発見や学びといったものをこども達から与えてもらえる営みなのだろうとも強く感じました。
▶児童は,自分のしたいことや楽しいと感じること,面白ことには,主体的に夢中になって取りかかります。一方,いやなことや苦手なこと,できないことには,受動的になりワクワク感を失っているように見受けられました。それでも,私の手助けによって児童の「できなかったこと」が「できる」ようになった時,児童は心からそれを喜び,とてもワクワクしていました。児童がよりたくさんのことにワクワクしながら取り組めたら,児童の世界観は広がっていくんだろうなと実感しました。児童がどのような考え方をしていて,どんなところで躓いているのか等,教員にとって児童理解は本当に大切なんだと痛感しました。
参加生徒のこういった振り返りを踏まえると,修立小学校「サマーボランティア」の高校生への教育力の高さを思わずにはいられません。お手伝いするはずの高校生が,児童から実にたくさんのことを教わりました。
参加した生徒の多くが,自分(達)のそうした気づきを自分のことばで語れるようにもなっています。「では,次に自分は何をすべきか」について既に具体的なアクションに取りかかっている生徒も少なくありません。いずれも,思いと覚悟をもって自ら動いたからこそ得られた,自分自身に根づいた本物の気づきだと思います。
本企画をご提案くださいました修立小学校の先生方,ありがとうございます。まずは自らがワクワクしながら東高生活に取り組むこと,誰からも学びとろうとすること,そして学ぶことは楽しいことなのだと,生徒それぞれが高校生活をよりよいものにするためのマインドセットを行うことができました。
「自分たちが東高で勉強している今も,この夏の数時間を一緒に過ごした児童(達)がすぐ横の修立小学校で勉強している。ワクワクしながら勉強してるかな。『わかった!』っていう瞬間を得られているかな。」サマーボランティアに参加した生徒はそんなことを考えつつ,同時に「自分も児童には負けてられないぞ」と自らに言い聞かせていることでしょう。
鳥取東高は生徒の自主的な取組を奨励し続け,学び続ける学習者の育成に取り組んでまいります。今後も本校教育活をご支援ご協力くださいますよう,どうぞよろしくお願いします。