卒業式式辞

2014年3月11日 11時33分

  卒業式 式辞

例年になく雪の少なかった冬が明け、春の訪れを感じる今日このよき日に来賓・保護者の方々のご臨席のもとに、卒業証書授与式を挙行することができましたこと、厚く御礼申し上げます。

平成25年度の卒業生は、幼稚部4名、中学部3名の7名の皆さんです。卒業生の皆さんご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。本校職員を代表いたしまして心よりお祝い申し上げます。

幼稚部の皆さんは3年前3歳で入学してきました。その当時、椅子に長い時間座ることもできなかったのですが、この3年間で立派に成長して、こうしていい姿勢で座っていることができるようになりました。すばらしことです。

中学部3年生は鳥の劇場のみなさんの指導を受けての素晴らしい劇の発表が大きな自信となりました。また宇津巻さんは自分の力でできることが多くなりました。特に茶道部に入って長時間正座ができるようになり、お点前の練習に励んだ成果を初釜でみることができたことをうれしく思います。清水君は鳥取県人権作文コンクールで最優秀賞を受賞し、堂々とラジオで自分の言葉で訴えました。前田さんも、本校が初めて参加した県優勝弁論大会で優秀賞を受賞し、会場から一番大きな拍手を頂きました。この3年間で大きく成長した皆さんに、心からお喜びを申し上げます。

さて、巣立ちゆく皆さんに私からひとつお話しいたします。

「時は過ぎ去るもの」あるいは「光陰矢のごとし」とよく言われるように、時は雪のように解けていくものと思いがちです。ところで、皆さんは砂時計を見たことがありますか。これが砂時計です。

島根県太田市の仁摩サンドミュージアムに設置された高さ5メートル、横幅1メートルもある1トンの砂が時を刻む巨大な砂時計を見て「時は積もりゆくもの」だと私は考えるようになりました。この巨大な砂時計はちょうど一年の時を刻むそうです。この施設のパンプレットには「時間の可視化であり、砂時計で今流れている時間が見えるし、過ぎ去った時間は豊かに蓄えられて砂の山になり、残り時間も見ることができる」とあります。

その砂が音もなく巨大な容器に積もっていく様子を見て、時は過ぎ去るものではなく、心のうちに積もりゆくものだと実感させられました。人は年を重ねていくにつれて、時は去っていくのだから仕方ないというあきらめの気持ちになります。しかし時は去っていかないで、ずーっと積もっていくものだというように意識を変えると、大切な時間を有意義に過ごそうという気持ちになるものです。こうして話している間も、もちろん刻々と時は刻まれています。

皆さんも自分の日常生活を思い返してみてください。あわただしい暮らしの中で、時間を大切に過ごそうとあまり意識はしていないと思います。「時は積もりゆくもの」というように思い直して、一粒一粒の砂が積もりゆくように、日々、一時、一秒、刻々と進みゆく時間の大切さを感じて、これからの過ごし方、生き方に対する姿勢を変えていってほしいと思います。過ぎ去った時間も、残り時間も私たちは見ることはできませんが、その一瞬一瞬を、一日一日を大切にいい時を自分の心に積もらせていくことが大事であり、それがやがて豊かな心やいい人生を紡いでいってくれる。そう受け止めて、日々を精いっぱい生きることの大切さを改めて考えてみてください。

保護者の皆様には、これまでの本校へのご理解・ご協力に感謝申し上げますと共に、今後も子どもたちが力強く生きていくことができますよう、陰ながらの支えをお願い申し上げます。

最後になりましたが、来賓の皆様方、お忙しい中を卒業式にご臨席賜り、卒業生を祝福してくださいまして誠のありがとうございました。心より御礼を申し上げまして式辞と致します。

        平成26年3月11日 

            鳥取県立鳥取聾学校 校長   後藤 裕明