アメリカ国立訓練研究所は,学習方法と平均学習定着率の関係を「ラーニングピラミッド」という図で表しています。同所の研究では,学習事項や学習内容の定着率を向上させる秘訣は学習者の能動的な学習にあることが示され,この図が示すとおり,内容をしっかり理解した上で「他の人に教える」ことは学習方法として有効な手立てであるとされています。
鳥取東高校はこのことに注目し,2年生有志が指導者(Teacher)となり,1年生希望者(Student)に集中的に教科指導を行う,通称「TSセミナー」を企画・実施しています。
今年度の企画は,「より高い学力を習得したい」という強い思いを持つ先輩(2年生)と後輩(1年生)の相乗効果を期待し,12月26日(火)・27日(水)の2日間にわたり実施しました。
Teacherとして参加した有志生徒の中には学校教員を志望している生徒も少なくなく,いずれの講座も白熱した学習時間となりました。
▶12月26日(火)〈教科〉数学:2次関数,三角比,確率
▶12月27日(水)〈教科〉英語:関係詞の用法及び関係詞が用いられた英文理解
自らの経験を踏まえてでしょうか。それとも,「後輩のために!」という強い思いからでしょうか。今回のセミナーのためにわざわざオリジナルの要点シートを自主作成した上で指導にあたる2年生がいました。中には,参観していた東高教員が思わず感心するような,そんな素敵な教え方をする2年生も。そして,「先輩,なぜこれだと誤答なんですか?」と,自分が本当に納得いくまで先輩に教えを乞う1年生も。
果たして,セミナー会場のあちこちから「なるほど!」「わかった!」という声が断続的に聞かれる,まさに主体的で深い学びが繰り広げられました。

参加した生徒の手応えは,セミナー後のフィードバック感想にも確認できます。(抜粋)
〈1年生〉
▶わからないところもできるようになったし,様々な考え方や解き方を知ることができた。考えの幅が広がった。
▶先輩が教えてくださったおかげで自分の苦手なポイントに気づくことができた。
〈2年生〉
▶今回のTSセミナーで教える機会をもらえたことで,本番に向けて勉強する中でどうやって教えたら1年生が理解しやすいだろうと考えたり,指導準備の過程で自分の理解度が確実に向上したりしたと実感するので,今回のセミナーに参加することができてよかった。
▶教えることで自分も理解を深められた。自分の復習にもなった。自分の知識不足や勉強不足に気づけてよかった。

「わかったつもり」。これが,生徒の学力定着や学力向上を妨げます。授業の余韻にひたって「わかったつもり」になっているであろう自分を慎み,「他の人に教えられる」ようになるまで授業内容を復習することは,実は東高生にとって大切な家庭学習の仕方なのだと,今回のTSセミナーは教えてくれました。