小学校そして中学校の夏休みの宿題として定番中の定番ともいえる,この「読書感想文」。読もうと思って図書館から借りたまま積み上げられていた本の残像…。「さぁ,書くぞ!」と意気込んでみたものの遅々として進まぬ筆…。そして,いつまでたっても埋まらない原稿用紙…。タイトルから想像される期待感や読後の感動・爽快感とは裏腹に,ちょっぴりほろ苦い思い出がよぎったりするかもしれません。
読書感想文そして読書体験記では,それぞれの想いを文章化する過程で,「なぜ自分がその本を面白いと思ったのか」「なぜ自分がその本を読んで感動を覚えたのか」といったことについてじっくり考えることが必要になります。感じたことや考えたことを,文字そしてことばにして他者に伝えられる表現力も必要となります。感想文は時に「考える読書」といわれますが,その理由はこんなところにもあります。
鳥取東高では毎年,国語科と図書館が連携し,夏季休業中の課題として読書感想文または読書体験記を1・2年生に課しています。この際,読書感想文と読書体験記を次のように定義しています。
▶読書感想文:本を読み,自分が考えたことを述べる文章。自分の内面の深まりや変化を中心に書く。
▶読書体験記:読書後に起こった,自分の内面及び実生活の変化や「体験」について述べる。
生徒からの作品提出後,校内選考を経た3~5作品をコンクールに出品したところ,なんと4つの作品が入賞しました!入賞したみなさん,おめでとう!
〈毎日新聞主催〉令和6年度第70回青少年読書感想文コンクール鳥取県審査会
優良賞 2年3組 熊澤 音愛さん
感想文題名:「時間」の捉え方
書名:モモ 著者名:ミヒャエル・エンデ
〈財団法人 一ツ橋文芸教育振興会主催〉第44回全国読書体験記コンクール鳥取県審査会
佳作 1年4組 森本 実愛さん
体験記題名:「努力と才能」
書名:学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話
著者名:坪田 信貴
〈鳥取県高等学校図書館教育研究会主催〉令和6年度第47回読書感想文コンクール
優良賞 2年3組 田中 萌花さん
感想文題名:「自分を見つめて」
書名:孤独と不安のレッスン 著者名:鴻上 尚史
優良賞 2年7組 山川 一嘉さん
感想文題名:「たとえゴリラでも」
書名:ゴリラ裁判の日 著者名:須藤 古都離
この4名の作品について,担当教員からは次のようなコメントが寄せられました。
▶今回の受賞作はいずれも,登場人物の経験や考えを自分に照らし合わせて内省するものなっており,前向きで,しっかりした考えが述べられています。こうした高校生らしい,素直で瑞々しい点が評価され,入賞につながったのではないかと思います。
自分の想いを文字にする。
心を動かされたことから考えた自分の意見や考え,気持ちをことばにする。
こうした知的創作手段として,日本文化には,感想文や体験記のほか,詩,短歌,俳句等様々なものがあります。多感な青春期を生きる高校生だからこそ,「課題として強制的にやらされる」のではなく,「やってみたら広がりと奥深さを感じる」という楽しさを,それぞれの表現法の特徴をとおして味わってもらいたいな…,そして「ことばを大切にする姿勢」も養ってほしいな…と,そう思っています。