鳥取東高校書道部と聞くと「書道パフォーマンス」を想起する…。そんな方も多くいらっしゃることかと思います。もちろん,高校生ならではの感性や躍動感を生かし,書の素晴らしさを音楽とダイナミックな作品をとおして表現するパフォーマンスに本校書道部員は継続して取り組んでいます。
このたび,日頃の精進そしてご指導くださったたくさんの先生方のご尽力が結実し,第17回全国公募書道展「放哉を書く」(放哉の会,新日本海新聞社主催)高校生の部において,本校3年生 西村 爽花さんが,最高賞となる放哉大賞・鳥取県知事長に選ばれました!
今年度の全国公募書道展「放哉を書く」に,鳥取市出身の俳人 尾崎 放哉の句を題材にした作品が全国から多数,寄せられました。一般の部には139点,高校生の部には57点そして色紙の部には28点の応募があったそうです。
このうち高校の部で大賞に選ばれたのは,西村さんの次の作品です。
▶「傘にばりばり雨音さして逢ひに来た」
作品制作や書道にかける思い等について,西村さんに聞きましたので紹介します。ひたむきに,そして真摯に書道に取り組み,素敵な時間をたくさん積み重ねてきたんだな…ということをお感じいただけるかと思います。
西村さんはじめ本校書道部員をご指導くださる先生方,そして直接・間接の別を問わず本校書道部をご支援くださるみなさま,本当にありがとうございます。西村さんが語っているとおり,みなさまの真心を大切に,そして道具への感謝を忘れず,本校書道部はこれからも頑張ってまいります。今後も温かいご声援のほど,よろしくお願いします。
〈作品制作への思い〉
3年生にとってはどんな大会も高校生活最後のものになります。この「放哉を書く」も同様。早くからいくつかの候補句を決め,これまで3年間,書道に取り組んできたプロセスを作品にぶつけたいという強い想いをもって,試行錯誤を繰り返しては締切直前まで表現を追求しました。
書道部で練成会を開催した時のことです。たくさんの先生がご指導にきてくださいました。当初は何枚書いても.細長い筆では線が飛んでしまいやすいため,自分の納得のいく作品がなかなか制作できないでいました。そんな時,先生が「文字を書くのではなく,情景を描け。」とご指導くださいました。この一言から,想像力が膨らんでいきました。
選定した句にある強い雨を表現するため,筆に身体ごと圧を変え,とにかく縦の流れを意識しました。高校生らしく,元気のある作品にするために,自分の殻を破り,一枚一枚を信じて挑み続けました。
〈句を選んだ理由・過程など〉
作品出品を踏まえて放哉の句を選んでいた時はちょうど梅雨でした。大雨が毎日のように続いていた時,「傘にばりばり雨音さして逢ひに来た」という句に出会いました。
「大雨に打たれながらも,逢いたい人に逢いに来た」その強い思いこそが,私が挑戦していた長峰の細い筆で,大雨の軌道が表現でき,かつ表現の幅を広げるきっかけになると思い,この句を選びました。
〈放哉大賞・鳥取県知事賞受賞を受けて〉
この作品は私に「自分」と向き合う機会を与えてくれました。自分に足りないと感じたところは周りに目を向け,自分の材料になるよう努力してきました。こうした挑戦がこのような放哉大賞受賞という結果になり,作品が認められ,本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。
ここまで本当に数多くの方々のお力をお借りしました。満足・納得いくまでやりたいことに最後まで協力してくださった顧問の石原先生。ご指導に関わってくださった先生方。一緒に努力を続けてきた書道部の仲間。どんな時も支えてくれた家族。そして,一枚一間に使った道具。すべてに感謝の気持ちでいっぱいです。この気持ちを忘れることなく,これからも日々,精進を重ねてまいります。