本校にはエキスパート教員に認定されている先生が4名いらっしゃいます。荻原先生はその一人で、国語で認定を受けておられます。
本時は、「複数の古典和歌をつなげ、歌合により他者と読みを磨き、判者として推し歌合を作ることができる」が目標でした。
・「空色」と言われて手に取るクレヨンの色が君とは違う哀しみ(中島愛)
・手をあててきみの鼓動を聴いてからてのひらだけがずっとみずうみ(大森静佳)
この二首の歌合から始まりました。和歌をどう解釈するのか、ポイントが紹介されます。

そして
・濡れつつぞしひて折りつる年のうちに春は幾日(いくか)もあらじと思へば(業平朝臣)
この和歌が登場する古今和歌集や伊勢物語を用いて、解釈について深い考察がなされます。
最後には次の三首について一人一首の解釈を他者へ伝える活動となりました。
・飽かでこそ思はむ仲は離れなめそをだに後の忘れがたみに(読み人しらず)
・恋ひわびて絶えん命ぞ惜しからぬそをだに君がゆかりと思はむ(徳大寺実定)
・憂き身をば我だに厭ふ厭へただそをだに同じ心と思はむ(藤原俊成)

ただ意味が分かるだけでなく、重要な語句など適切に解説が行われる中、生徒たちは本当に楽しそうに授業を受けていました。本時で扱われた和歌はおそらく、自分の大切な人に対しての思いを詠んだものを選ばれているのではないか、と思われます。高校生が自身の日常を投影しやすく、そして感情移入しやすいように工夫されていると感じました。そういったことも生徒たちが生き生きと授業を受けていた要因ではないでしょうか。そして、荻原先生の柔らかい雰囲気に誘われ、読み人がそこに立ち上がるようなそんな気配すら感じました。内容は盛りだくさんでしたが、しっかり考え、それぞれが思いをはせた1時間でした。