日誌

創立40周年記念式典式辞

2014年5月30日 17時00分

 本日、鳥取養護学校創立40周年記念式典を挙行するにあたり、鳥取県教育委員会教育委員 委員長職務代行者 松本美惠子様、鳥取県立中央病院長 日野理彦様、鳥取県教育委員会特別支援教育課長足立正久様、鳥取市教育委員会次長 木村正人様、本校歴代校長様、江津地区関係施設長様、県内特別支援学校長様、高等学校長様、関係小中学校長をはじめ、多くの皆様の御臨席を賜りまして、本式典を挙行できますことを心から感謝申し上げる次第です。
  高いところからではございますが、お礼申し上げます。

  本校は、昭和50年4月1日、吉方町にあった旧鳥取県立中央病院を仮校舎として、病院内に小学部6学級、中学部3学級が開設されて、本校教育がスタートしました。
  昭和54年度から養護学校義務制実施となる旨の政令が昭和48年11月に公布され、全国的に義務制実施に向けて準備が進められていく中、本県においても準備が進めれ、東部における大きな取組がこの鳥取養護学校の創設でありました。
  校舎は、現在の県立中央病院が新築移転する江津の地となりましたが、このことについては、当時の中央病院長である牧野禮一郎氏が、県立中央病院新築の計画に際して、小児慢性疾患の子どもたちの小児病棟設置を決められ、入院児のための養護学校を病院に隣接して設置するよう県教育委員会に進言されたとのことであります。

  昭和50年4月1日、初の県立病弱特別支援学校として「鳥取養護学校」が開校し、同年5月30日に新校舎に移転しました。新校舎は鉄筋一棟の小さなものでありましたが、児童生徒、保護者、教職員にとっては、まさに希望の光でありました。それまでは、すべてが借り物。教室も無ければ、机、いすも無い。教師は、病室に出かけて授業をするが、その病室には大人の方もおられ、大きな声を出すこともはばかられる状況がありました。
  昭和54年度から、それまで「就学免除」とされていた在宅の重度の子どもたちにも教育を行うべく「訪問教育」が行われることとなりました。このことは、すべての子どもたちに教育の道が開かれ、どんなに障がいが重くても子どもたちの実態から教育が始まるという大きな発想の転換であり、画期的なことでした。しかしながら、実質の時間は、1時間程度の教育が週に2回ほど行われたということであり、十分なものではありませんでした。このことが充実するのは、「重複障がい学級」が設けられる昭和63年度からのこととなります。

  平成10年4月に「高等部」が設置され、小・中・高等部として一貫教育ができるようになりました。中学部(単一障がい学級)卒業生の中には、高等学校段階の教育も病弱特別支援学校で学びたいという生徒が多くいました。また、重複障がい学級の生徒においては、学校教育の場が中学部までで終わってしまうということがあり、この高等部設置は、本校の児童生徒、保護者が長年望まれてきた願いでありました。

  この平成10年度以降、鳥取養護学校は、めざましく発展します。
  平成12年4月からは、看護師が配置(当時は2名)されました。このことによって、医療的ケアを要する児童生徒も安心して学校で学べるようになりました。
  また、平成15年4月からは、肢体不自由教育の看板も掲げる学校となり、肢体不自由・病弱の特別支援学校となりました。また、同年、学校給食も開始されました。これまで、本校の学校給食は、一人一人に食事制限があったり、食形態についても、きざみ食、ミキサー食、ペースト食があるため、この実現は「夢のまた夢」と思われていただけに、このことも画期的なことでありました。
  さらに、平成18年9月からは、スクールバスが運行されるようになりました。特別支援学校の児童生徒の通学圏域は広く、このスクールバス運行も学校教育の充実に大きくつながるものでありました。

 開校当時、教職員13名から始まった小さな学校も、今や教職員90名を超える大きな学校になりました。本校創立以来の卒業生は、高等部が設置されるまで(平成9年度末まで)の中学部卒業者数は101名、鳥取養護学校高等部が設置されてからの高等部卒業者数は97名となっております。
  また、施設設備も当初と比べれば各段に充実し、冷暖房完備の体育館、室内にある水治訓練室、障がい者用エレベータ・トイレ、自立活動室、ケアルーム、給食調理室等を備えたものとなっております。
  このように、学校の規模は拡大し、施設は充実して参りましたが、要はここに勤務する教職員や学ぶ児童生徒に、開校当時の人々に負けないくらいの気持ち・気概があるのかどうかが問われることと思います。

  岡本かの子さんの歌にこのような歌があります。
  「さくら花 力いっぱい咲くからに 命をかけて 我が眺めたり」
  毎日、各教室を周ってみる時、特に重複障がい学級を見ますと、まさに子どもたちが命の花を咲かせて生きている。このようなことを強く感じます。それゆえに、私たちは、その「命の花」に応えるべく「命をかけて」関わる気概をもたなければならないと心から思う次第です。

  鳥取養護学校の過去から未来につながる歴史の大河があるならば、私たち教職員は、歴史の一端を担う者として、この記念すべき年に確かな学校経営・学校教育をすることを改めて肝に銘じなければなりません。
  また、児童生徒の皆さんは、今日の恵まれた学びの環境に深く感謝し、感謝の気持ちをもって、日々の学習に取り組んで欲しいと願うところです。

  歴史を振り返ることは、今を客観的に観ることであり、未来を展望することでもあります。本日、多くの皆様の御来駕を得て、創立40周年記念式典が行える喜びを深く噛みしめ、未来を見据えて鳥取養護学校の教育を一層充実させていくことをここに誓い、簡単ではございますが式辞といたします。

                    

              平成26年5月30日
鳥取県立鳥取養護学校長  野 坂 尚 史