同窓会

第18回同窓会 体験発表(入口友里さん)

2017年8月28日 10時58分

 ○平成20年度高等部卒業 入口友里さん

「卒業後の活動と、これから挑戦してみたいこと~皆生から広がる学び・出逢い」

                                  

 皆生養護に来たことは、私にとってターニングポイントであったと思います。それまで通っていた地元の小中学校では、‘ハンディキャップのある私’はどこか特別な存在であり、努力しても周りの人と同じようにできないことも多く、悩んでいました。皆生では、それぞれに合った方法で勉強し気持ちを表現することが普通で、人と違っていてもいいのだと気づくことができました。先生方が私の可能性を信じ、良いところを引き出してくださったお陰もあり、無理に頑張らなくても今できることを大切に生きていこうと思えるようになりました。一人でゆっくり自分と向き合うことの多い時期でしたが、学校に行けないときも、先生や友達の存在が私の支えになっていました。皆生での気づきや体験が、その後の様々な人との出逢いや活動につながっています。

 


 私は現在、通信制の大学で学んでいます。自宅から通える大学が少ないことと、自分のペースで学べることが、この方法を選ぶ決め手になりました。皆生養護を卒業後、大学で世界遺産学を学びました。世界遺産をツールに、考古学や宗教・歴史・観光・建築などの幅広い分野を通して、先人の知恵を生かし、変化の激しい今の時代をどう生きていくのかについて考える視点を持つことができました。すべてインターネットで受講できる日本初の大学で、通学が不要なため、日本全国・海外からも幅広い職種や年齢の方が集まり、熱心に学ばれていました。実際に本を執筆されたり、発掘などのフィールド調査に携わる先生方にレポートを添削していただき、他の学生の方とも掲示板やメールで意見交換するなかで、自宅に居ながら日本各地や世界を旅するように自分の視野を広げることができました。この大学で、私の発想を面白いと言ってくださる方々と出会い、独自の観点で物事を捉えるのはとても素敵で大事なことだと教わりました。

 学部の募集停止や科目の規定変更などもあり、予定より長く在籍することになりましたが、無事に卒業し、学士号を取得しました。さらに、思いがけず学長賞をいただき、キャンパスにて学生代表謝辞も述べさせていただきました。

 現場実習でお世話になった地域の図書館で、絵本の読み聞かせや返却本の整理のボランティア活動をしています。読み聞かせは、皆生の図書館で実習していた時、司書さんが薦めてくださったことをきっかけに始めました。私の読むお話を、小学部や中学部の子たちが目を輝かせて聴いてくれたことがとても嬉しく、元気をもらいました。彼女たちから絵本の愉しさを改めて教わり、クラスにも出張して好評でした。その時抱いた、「人に何かをしてもらうだけではなく、自分の好きなことや得意なことを生かして人の役に立ちたい!」という思いは今も私の原動力になっています。読み聞かせだけでなく、わらべうたや手遊びにも挑戦中です。

 皆生の図書館にあった1冊の本がきっかけで、カラーセラピーに興味を持ち、カラーセラピストの資格を取りました。毎年12回ブース出店し、お客様が気になる色を通してご自身の気持ちや体の状態に気付き、より豊かな毎日を過ごすためのヒントを、お話を聞きながら一緒に見つけています。またアロマについても、授業で体験したことが趣味や資格につながりました。歌も好きで、音楽の先生に誘われてゴスペルサークルのメンバーとして活動していました。個性あふれる皆さんと公会堂や教会などで共演することができました。皆生の同窓会やセンターで歌う機会にも恵まれ、幸せでした。この経験は、わらべうたや読み聞かせの際の発声に生かされていると思います。

 また、皆生に来た頃から、デジカメで写真を撮り始めました。高等部の時ブライトをきっかけに、撮りためた写真で1作目の写真絵本『いきものたちの旅』を創りました。主に動物の写真に文をつけたもので、卒業後も図書館での読み聞かせに活用し、子どもたちやお母さん方・司書さんにも喜んでいただきました。次に、大学生活の記念として2作目の写真絵本『空と雲の印象』を制作しました。本作では、山陰の空や雲の写真を中心に構成しました。この本の世界を多くの方に楽しんでいただきたいとの思いから、図書館や銀行で展示もしました。展示の前の交渉から準備・搬入出まで、自ら積極的に動き、意欲を持って取り組むことができました。チラシを作り、今までお世話になった方や新たに出会った方々にもお知らせして、様々な感想やエールをいただく機会を得ました。各会場とも大盛況となり、とてもありがたく貴重な経験になりました。将来は、図書館への寄贈や出版もしたいと考えています。

 大学を卒業後は、別の大学に入学し、念願だった図書館学を学んでいます。皆生に来て初めて司書という職業を知りました。司書さんは、本にはいろいろな楽しみ方があるということを教えてくださり、その時々で心に寄り添ってくれる本とメッセージを届けてくださいました。私も、本とそこに広がる世界を通して、地域や周りの方に恩送りをしたいと考えています。そのために、自分の知識や技能などの引き出しを増やし、その過程で生きる力を身につけていきたい。それが今も学び続ける理由です。

 最近では、民話や昔話の語りに独学で取り組んでいます。はるか昔から受け継がれてきたおはなしを、日本人の遺産として次世代に繋ごうと語り始めたところです。これまでの学びや経験と想像力を総動員し、ライフワークとして続けていこうと考えています。

 今の時代は、様々な大学や資格などがあり、いろいろな方法で学ぶことができます。皆さんも、もし何かを学びたいという思いがあったら、それを大切にして、自分に合った方法で挑戦していただきたいと思います。