毎朝,早朝から自習室にやってくる生徒に共通して特徴的なのは,「せかせか」している切迫感が感じられないところです。どの生徒も,自習室で自分が何に,どのように取り組むかを明確にした上で,計画的に自習室での自学に勤しんでいることがうかがえます。
受験したての全国模試を復習するため,解答解説冊子を教材として学び込もうとする3年生も少なくありません。
「模試は復習して完結する」とよく言われます。確かに,約1か月後に返却される成績表をいくら眺めていたところで学力は一向に向上しません。約1カ月前の自分の状況を見つめているだけですので。また,受験後1カ月も経ってしまっていれば,当該模試を復習しようにも,受験時の思考・判断や解答プロセスなどについて記憶が定かでないことも多く,効率的な学習も望めません。自習室での模試見直しは,その生徒にとってみれば,2年次までの体験を踏まえた「覚悟ある自学スタイル」なのでしょう。
「明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の ふかぬものかは」。
専用ノートと思わしきものを作り,集中して模試の見直しに取り組むこの生徒の後ろ姿に思わず,親鸞作とされるこの一句を想起しました。
この生徒は,本気度に欠け,場当たり的だったそれまでの自分の学習スタイルを猛省し,心を入れ替えて取り組んでいるのかもしれません。
あることをきっかけに進路目標が定まり,その実現に向けて猛烈にやる気になったのかもしれません。
家族,友人のおかげで,自分は今日も安全に,そして元気に登校でき,相応の費用を投じて受験させてもらったからこそ,こうして模擬試験の見直しに没頭できるんだ…と,自分を支え,応援してくれている人達への感謝の気持ちを活力にして自学に取り組んでいるのかもしれません。
毎朝,数十人が集う自習室。そこは,数十の思いが交錯する学びの空間となっています。その思いが,凛とした空気感を創っているように感じられます。
もちろん,自習室より自宅を選択し,早朝あるいは夜間,「思い」と「志」に見合う家庭学習に取り組んでいる生徒もたくさんいます。そしてもちろん,授業を一番のよりどころとして学習している生徒が多いことも,私達はよく知っています。
結局のところ,自分でやらねば本当の力は身につきません。その営みは実に地味で単調。学習の成果が実感できるようになるまでには相当な時間もかかります。だからこそ,鳥取東高は「思い」をもって粛々と取り組む生徒をしっかり支え,応援したい。そう思っています。
鳥取東高校でのチャレンジや試行錯誤は,生徒一人ひとりが自分の個性やライフスタイルにあった学習方法を見つけ,習慣化し,確立することにもつながります。生徒の皆さん,一緒に粘り強く取り組んでいきましょう。