令和7年10月17日(金)、本校を会場に、島根県から松江南高校、松江北高校、松江東高校、出雲高校、鳥取県内から鳥取東高校、鳥取西高校、倉吉東高校、鳥取中央育英高校、湯梨浜学園高校、米子西高校、境高校の11校、総勢110名の生徒の皆さんの参加を得て、「ココカラ・サイエンス(科学を創造する人財育成事業)」を開催しました。
午前中の講演会では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所 准教授 生田 ちさと氏(本校87期)を講師としてお招きし、「進路に迷ったら 宇宙(そら)を見よ:星の輪廻転生と遙かな宇宙の物語」という演題でご講演いただきました。
宇宙の始まりから最新の研究に至るまでを、数多くのシミュレーション動画とともにわかりやすく教えていただきました。専門知識の有無にかかわらず、誰もが宇宙の壮大さに引き込まれる内容で、初めて宇宙科学に触れる生徒にとっては無限の可能性を感じるきっかけになりました。また、もともと宇宙に興味・関心が高い生徒たちは、先端研究の話題にさらに深く心を動かされました。生徒からは「宇宙にはまだたくさんの謎があるので、今後の研究に注目したい」「”進路に迷ったら宇宙を見よ”という言葉に最初は不思議さを感じたが、星の誕生と死、そして次の星へとつながる星の輪廻の話を聞き、その意味が分かった気がした」など、生徒たちの学びと成長を感じさせる感想が多く寄せられ、卒業生との貴重な交流を通じて、将来への視野が大きく広がりました。
午後からは、13分野の講座に分かれ、数学コンテストや科学分野の実験、模擬国連などに取り組みました。本校生徒と11校の参加校生徒が一緒に興味・関心の種を膨らませたり、科学探究力や社会貢献意識を培ったりするようなSTI(Science Technology and Innovation)体験をしました。
3人一組のグループに分かれ、難易度別の問題を制限時間内に解き、その時間を競いました。徐々にレベルの上がっていく問題に、頭を寄せ合い、力を合わせて取り組む姿が多くみられました。山陰地区の数学猛者たちが切磋琢磨したコンテストの結果、今年の優勝は鳥取西高校のグループでした。おめでとうございます。
振り子の周期の公式は、おもりの大きさを無視して、振れ角が小さいとして導かれています。現実の大きさが無視できないおもりではどうなるか、振れ角を大きくしたらどうなるか、本校理科教員を講師として実験で確かめました。
本校理科教員を講師として、溶液の変化を手がかりに、水溶液の中に隠れている金属イオンを検出することに挑戦しました。実験中、違う班に赴き情報交換する「交流」時間を設けたことで、活発な実験活動になりました。他校の生徒とも活発に意見交換している様子が見られました。科学探究力だけでなく貴重な交流の機会となりました。
理化学研究所生命機能科学研究センター理化学研究所名誉研究員 林 茂生 先生をお招きして、キイロショウジョウバエをモデル系として発生における組織の形態形成のしくみを最先端の研究に触れながら講演をしていただきました。その後、遺伝子組み換え体(GFP)と非組み換え体のショウジョウバエの観察を行い、発生のしくみを考察しました。生徒は普段体験することができない蛍光顕微鏡による観察を行い、生物に対する好奇心の種を膨らませました。
日本地学オリンピック派遣講師による特別講座として、兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 川村 教一先生をお招きして、地震について学びました。持続可能な社会を考える上で欠かせない自然災害リスクを地球科学の視点からデータを分析した後、グループディスカッションを通じて思考を深め合いました。
F.情報分野「3Dモデリング入門」

本校情報科教員を講師として、3Dモデリングアプリ「Autodesk Thinkercad」を使って3Dモデリング(3Dのデータを作成すること)の基礎を体験的に学びました。ペンのキャップなど身近な製品について、普段気が付かないデザインの工夫などに着目してのモデリング作業に没頭する様子が印象的でした。
G.家庭科分野「コーヒーの製法と旨味の科学」

有限会社自家焙煎工房ブラザーズ珈琲 代表取締役 松永 末男氏を講師にお招きし、焙煎(加熱処理)方法の違いによるコーヒー豆の細孔分布の比較実験を行いました。その後、旨味の違いに気付いた生徒たちからは、「コーヒーの奥深さを知った」「コーヒーを科学的に分析したことがなかったので興味深かった」などの感想がありました。
H.外国人研究者研究紹介講座「インドの高山に住むコミュニティの社会生態的レジリアンスへの氷河貯水の影響」

京都大学講師 Tusharkanti Kumar先生をお招きして、インド高山地帯に暮らす氷河貯水の現状と有効性について英語で講義をしていただきました。インドのラダックをフィールドに温暖化が進む地球環境に対応するための伝統的生活と最新テクノロジーの融合に関する研究について紹介していただきました。インド文化への興味を高めるだけでなく、海外で研究する意欲を高めた生徒もいました。
I.模擬国連「Introduction Activity to Model United Nations in English」

大学でも模擬国連を実践する岡山大学准教授 Caleb Prichard先生をお招きして、「オーバーツーリズム」をテーマに、オールイングリッシュで模擬国連を行いました。仮想の国連総会の議場を設定し、生徒たちが各国の大使となって議論し決議をまとめる模擬国連では、はつらつと一生懸命取り組む姿がみられました。また、他校の生徒さんも多数参加してくださり、生徒同士の貴重な交流の場ともなりました。
J.データサイエンス「探究のためのデータサイエンス入門」

データサイエンス教育のエキスパートである雲雀丘学園中学校・高等学校 林 宏樹先生をお招きして、仮説の設定や目的変数を意識したアンケートの設計、オープンデータの活用などを体験的に学びました。課題探究だけでなくこの先の学びに活かすことできる実践的で深い内容でした。
K.地域探訪「東高周辺を歩いてみよう!」

米子東高校の立地する勝田町を通る出雲街道や江戸時代に創建された寺社の歴史について、本校地歴科教員と共に、地図を片手にフィールドワークを行いました。歴史学だけでなく地理学や民俗学の視座で地域史について多角的に考察する良い機会となりました。
L.国際理解(貿易ゲーム)「貿易ゲームを通じて考える開発と幸福な社会」

序盤の白熱した貿易ゲームを経て、JICA中国 新川 美佐江先生によるオンラインワークショップ「ウズベキスタンの綿花栽培とアラル海」に取り組みました。JAXAの衛星が年々縮小するアラル海の様子を捉えています。その背景にある綿花栽培と私たちの身近にある衣料品の関係を知った参加者にとって、グローバルな課題を自分ごととして深く考え、貢献意識を育む良い機会となりました。
M.宇宙に関する座談会「JAXA 生田先生、鳥取市さじアストロパーク織部先生との語らい」

午前中に講演していただいた生田 ちさと先生と鳥取市さじアストロパーク主幹兼学芸員 織部 隆明先生をお迎えして、本校理科教員をコーディネーターに生徒の皆さんと共に座談会を行いました。鋭い質問が会場を盛り上げ、生田先生からも「とても楽しい時間をすごすことができました」との感想を頂きました。
ご協力いただきました皆さん、ありがとうございました。
また、参加者の皆さん、来年のココカラ・サイエンスでまた会いましょう。