令和6年10月16日(水)、本校を会場に、島根県から松江南高校、出雲高校、鳥取県内から鳥取東高校、鳥取西高校、倉吉東高校の総勢81名の生徒の皆さんの参加を得て、「科学を創造する人財育成事業」を開催しました。
午前中の講演会では、京都大学名誉教授で、自然科学研究機構理事兼基礎生物学研究所所長 阿形 清和氏を講師としてお招きし、「再生研究と再生医療」という演題でご講演いただきました。
阿形先生は、高校時代に出会った過疎問題とサッカーがライフワークの一つとなり、現在も過疎地域にサッカーチームを作って指導していることと、同じく高校時代に出会った『細胞の社会』という本に衝撃を受けて再生研究の道に進み、以後40年以上イモリとプラナリアを用いた再生研究を続けていることを話してくださいました。また、プラナリアの再生実験や多機能性幹細胞であるiPS細胞による再生医療の未来などについてわかりやすく説明してくださいました。
最後に「科学を創造する人財」を目指す高校生に向けて「サイエンスは〈正確な観察〉→〈鋭い仮説〉→〈実験による証明〉の3段階で成立する。常にその原則を保持し、今どの段階にあるのかを冷静に見極めること」「目標を定めたら、長期的視野でそれに向かう努力を積み重ねていくこと」とメッセージを送ってくださいました。講演を通して、今後の再生医療の可能性と、自分の決めた目標に向かって努力することの大切さを学ぶことができました。
午後は12分野に分かれ、数学コンテストや科学分野の実験、ワークショップなどに取り組み、本校生徒(希望者)と他校の生徒が、探究する楽しさを体験しました。
A:数学コンテスト
3人一組のグループに分かれ、難易度別の問題を制限時間内に解き、その時間を競いました。徐々にレベルの上がっていく問題に、頭を寄せ合い、力を合わせて取り組む姿が多くみられました。今年度の優勝は鳥取西高校グループでした。
B:物理分野
「マイコンとセンサーを用いて物理実験をグレードアップしよう!~水の抵抗~」がテーマでした。
記録タイマーを用いた基礎実験では誤差が大きく考察しにくいため、マイコン&センサーを用いて正確に追究することに挑戦しました。
C:化学分野
「金属イオンを検出してみよう!」がテーマでした。
溶液の変化を手がかりに、水溶液の中に隠れている金属イオンを検出することに挑戦しました。実験中、違う班に赴き情報交換する「交流」時間を設けたことで、活発な実験活動になりました。他校の生徒とも活発に意見交換していました。
D:生物分野
「分子生物学を用いたノーベル賞研究とがん研究」がテーマでした。
日本分子生物学会派遣講師による特別講座として、広島大学大学院統合生命科学研究科 上野 勝氏にご指導いただき、ノーベル賞受賞に繋がった分裂酵母変異体を用いた抗がん剤に関する実験を行いました。最新の実験器具を用いた実験を行うことで、最先端の分子生物学分野で行われている研究に触れることができました。また、がんの最新の情報を学ぶことで、抗がん剤の仕組みや最新の治療法について理解を深めることができました。
E:地学分野
「変動帯日本列島の自然災害リスクを考える」がテーマでした。
日本地学オリンピック派遣講師(JST派遣)による特別講座として、兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 川村 教一氏にご指導いただき、持続可能な社会を考える上で欠かせない自然災害リスクを地球科学の視点からデータを分析し、議論しました。
F:情報分野
「AI時代の扉を開く!生成AIディスカバリーワークショップ~文書生成からプログラミングまで体験しよう~」がテーマでした。
生成AIを活用して文書の作成、データの収集・整形・分析、プログラミングなどを行いながら、その有用性や可能性、そして課題について考えました。
G:家庭分野
「メイラード反応~食べ物の焼き色は何で決まる?~」がテーマでした。
実際に普通のパンケーキと白いパンケーキを作り比べ、褐変現象の原因となる物質は何かを確かめました。
H:外国人研究者研究紹介
特別講座「日本在住の外国人研究者から研究の楽しさを学ぼう!」と題して、岡山大学学術研究院社会文化科学学域 Dr. Manuela Massaに『人文学・哲学および倫理学を研究するってどういうことだろう?』という内容について英語でお話いただきました。外国で研究を続ける楽しさ、苦労などを伺いました。
I:地歴巡検
「東高周辺を歩いてみよう!」がテーマでした。
毎日登校している学校がどのような場所にあり、周辺にはどんな歴史が隠されているのかを本校教員の案内のもと、フィールドワークを行いました。
J:コンセンサスゲーム
NASAゲームで月面・雪山から帰還する方法や、沈没しそうな船の船長として正しい選択をする方法を考えるゲームを行いました。議論がとても盛り上がり、ターンを重ねるごとにいろいろな意見がでました。
K:コミュニケーションワークショップ
演劇の観点から、声と体の使い方を工夫して普段のコミュニケーションを円滑にするヒントを学びました。
L:模擬国連
「模擬国連について知ろう!(国連カフェ)」がテーマでした。
講師として日本模擬国連副代表 水越 萌巴氏にご指導いただき、国連総会を議場として、各国の大使となって国連のカフェメニューについて議論しました。経済的・文化的・宗教的観点をどのように考慮していくかが争点となりました。
どの分野も楽しい雰囲気の中で多くの学びと発見があり、充実した活動となりました。
ご講演いただいた阿形氏をはじめ、各分野でご指導いただいた講師の先生方、参加していただいた各校の生徒の皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。