創立120周年記念式典式辞
 
 令和の時代に移り、秋が深まる今日の良き日に、卒業生の皆様が思い出深き高校生活を過ごされたこの勝田ヶ丘の地で、鳥取県西部総合事務所長 藤井秀樹 様、鳥取県教育委員会委員 若原道昭 様をはじめ、多数の御来賓の御臨席を賜り、鳥取県立米子東高等学校 創立120周年記念式典がかくも盛大に挙行できますことは、教職員、在校生一同の大きな喜びであり、ここに厚く御礼を申し上げます。また、記念事業として、勝田ヶ丘同窓会並びにPTAの皆様から、我が校教育の充実に向け、第二グラウンド上のガードポール設置など、多くの御支援を賜りましたことに、重ねて御礼を申し上げます。
 冒頭ではありますが、先日の台風・大雨によって甚大な被害が発生しています。被災された皆様に、お見舞いを申し上げますと共に、一日も早い復旧をお祈りいたします。
 さて、本校は、明治32年4月、鳥取県第二中学校として創立されました。翌33年2月、秀峰大山を仰ぎ、紺碧の日本海を望む勝田山のふもと、高砂(たかずな)と呼ばれる砂山であったこの地に校舎が建設されました。
 札幌農学校でクラーク博士に教導を受けられた初代校長の石橋朗先生が開拓進取の気風や高い志と不屈の気概を鼓舞されて、校訓・質実剛健、校風・文武両道の精神がここに誕生したのであります。創立当時、喜びと希望に満ちて、教師と生徒が勝田山から切り出した石で石垣を築き、土を運び、通学路をつくり、山にあった松の幼木を校門前坂道の両側に植えたといいます。
 明治42年、鳥取県立米子中学校と改称され、時代は大正を経て昭和に移り変わります。昭和23年の学制改革に伴い鳥取県立米子第一高等学校となり、この年に定時制課程、通信制課程が設置されました。翌、昭和24年、鳥取県立米子東高等学校が立ち上がり、米子実業高校及び法勝寺実業高校が統合され、3校舎、8課程を有する生徒数が2千人を越える高等学校となりました。昭和28年、長砂校舎、法勝寺校舎の2校舎は米子南高校として独立し、家庭学科は米子西高校に移管され、勝田校舎のみとなる米子東高等学校となりました。創立から今日に至るまで、我が校は、県下有数の進学校として、三万四千七百有余名の俊才を世に送り出し、国家社会に貢献してきました。
 部活動は、開校当時から、野球部、後にボート部となる端艇部や、剣道、柔道、陸上競技、文芸などの各部が早くも誕生しています。野球部は、夏の甲子園大会の県予選・皆勤校であると同時に、23回もの甲子園出場を果たし、溌剌としたプレーで毎回スタンドを魅了しています。ボート部は、これまで幾たびも全国制覇を成し遂げ、柔道部、陸上競技部も昭和の時代に全国制覇を果たしています。また、昭和から平成にかけては、ラグビー部、サッカー部、テニス部が全国大会の常連となりました。
 創立110周年記念事業が行われた平成21年から今日までの10年間の主な軌跡をたどると、筆頭にあげられるのは、専攻科の閉科であります。昭和35年4月の設置以来、53年の歴史を有し、5千人を越える有為な人材を輩出してきた専攻科が、官から民への流れの中で、残念ながら平成25年3月に閉科となり幕を閉じました。
 次に、校舎改築が我が校の変容をもたらしています。プールの廃止、平成22年3月の新第二体育館の竣工を皮切りに、平成28年6月には、新たな管理・教室棟が、平成29年には新たなシンボルとなる時計台を有する多目的ホール棟がそれぞれ完成しました。平成30年度に、渡り廊下の設置と第三グラウンドの整備をもって、校舎改築が完了しました。この校舎改築に併せて、定時制課程の独立棟が北校舎に設置されました。現在、定時制課程の生徒は、より充実した教育環境の中で学校生活を送っています。
 全日制課程にあっては、平成29年度にSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)の指定を受けたことを契機に、我が校が独自に設けた科目「課題探究基礎」「応用」「発展」の3科目を展開して、科学的探究心を育成しています。また、平成30年度入学生から単位制に移行し、科目選択の幅を広げ、よりきめ細かな学習を推進しています。海外派遣では、「台湾陽明高級中学交流」、SSH事業の「オーストラリア・アデレード研修」、52期の小川彩子様からの奨学資金による同窓会事業「アメリカ・ボストン研修」を設け、グローバル社会で活躍する人材の育成に努めています。部活動では、ボート部が平成30年に、春の選抜大会、夏のインターハイと連続で全国優勝を果たしました。更に、硬式野球部が、平成最後のセンバツ甲子園と令和最初の夏の甲子園に連続出場をいたしました。皆様から、多大なる御支援・御声援を頂戴したことに対し、あらためて厚く御礼を申し上げます。春夏連続となる甲子園出場は、昭和35年、センバツ準優勝の時以来、実に59年ぶりの快挙であり、大きな功績を刻みました。その他の部も今年度、全国大会に出場した生徒が143人にのぼるなど、多くの部活動が素晴らしい成績を収め、「文武両道」の「米子東」はここにありと全国に誇示しています。
 現在、我が校は、全日制課程24学級、定時制課程3学級、生徒数1,015人、教職員数110余名を有し県下最大規模を誇っています。折しも、近年、人工知能AIなどの先端技術が高度化する知識基盤社会に対応し、高等学校には新しい教育が求められています。そのような中、我が校は、全日制課程、定時制課程ともに、「未来を拓く人財の育成」を教育目標に掲げ、社会の変化に対応した教育を推進しているところです。
 明治、大正、昭和、平成の時代を経て令和を迎えた今、本校創立を記念するこの節目にあたり、在校生の諸君には、勝田ヶ丘周辺の一木一石から、かつて、ここで暮らした強者達の志を感じながら、決して他に依存することなく、自らの未来を自らの責任で主体的に切り拓いてほしいと強く願うところです。米子東高等学校で磨いた力をもって社会に貢献する人財になることが、我が校の伝統を継承することにつながります。
 結びに、本校の発展にお力添えいただきました、鳥取県、並びに県教育委員会をはじめ、歴代の校長先生方、教職員・同窓生・保護者の皆様、そして多くの御支援、御協力を賜りました地域の皆様に、衷心より御礼申し上げます。教職員、生徒一同、決意を新たにして、更に大きく飛躍すべく、米子東高等学校発展に邁進することをここにお誓いし、式辞といたします。
  
 令和元年11月15日

                                                              鳥取県立米子東高等学校長 田中 宏