学校長あいさつ

 第29代校長 福光 浩

 令和6年度になり、本校は創立116年目を迎えました。この年度初めというのはいつも緊張感や高揚感を感じますが、今年度は例年以上に気持ちの高ぶりを感じています。

①新学習指導要領の完全導入、ICTの普及に伴い、教育の現場にも大きな波が押し寄せています。これまでの「知識・技能」に加え、現在は「思考力・判断力・表現力」「主体性」「他者と協働して取り組む力」など様々な力を身につけることが求められています。求められる力が変われば、授業の形態も変わらなければなりません。全国の多くの学校が直面している問題ですが、本校でもここ数年、試行錯誤を繰り返しながら各教科でこの課題に取り組んできました。授業のかたちには「これが正解」というものはありませんが、よりベターな授業を目指して、今後も授業改善に取り組んでいきたいと思います。

②国際バカロレア(IB)教育は、1期生の選考が終わり、この4月から8名のIB生を対象に正式な授業が始まりました。IB教育の適切な実施、IB生の成長に学校全体で取り組んでいきたいと思います。また、これからは実際の授業を見ていただいたり、IB生の生の声を聞いていただくことで、より深くクリアにIB教育を理解していただくことができます。多くに方にIB教育の魅力を伝え、興味関心を持っていただけるよう、情報発信にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

③6年目を迎えた探究学習では、校外の様々な力をお借りし、教員のマンパワーに頼らないシステムづくりに取り組んでいます。昨年度は地元自治体や企業と連携し、学校では到底準備できない活動や発表の場を生徒に提供することができました。今年度は外部講師の力もお借りしながら、キャリア教育の一環として、生徒の進路実現に繋がる探究学習を進めていきたいと考えています。

④定時制はここ数年入学者が増えてきましたが、これは本校定時制の指導体制や生徒の成長ぶりに対する評価だと考えています。今後も安心安全で居心地の良い環境を目指して、生徒を指導・サポートしていきたいと思います。また、今年度は各教科でICTを使った個別最適な学習に取り組むこととしています。一人一人の学力や個性に応じた、よりきめ細かな指導を目指していきたいと思います。

 これらの取組を融合させ、学校生活の様々な場面で生徒の成長を促し、サポートしていきたいと考えています。それぞれの取組の様子は、学校ホームページやインスタグラムで発信していきますので、どうかご覧ください。

令和6年4月 倉吉東高等学校長 福光 浩

教育の現状(6)

2011年8月28日 00時00分

 生徒の学びをいかにして発動させるか。「教育の現状」ではこのことについて述べてきました。人間はもともと外界の出来事に対して「なぜ」と疑問に思ったり、またそれを解明したりすることに喜びを感じるように出来ています。これは人間の生得的な性質であり、理由などありません。「分かる」ことは人間にとって、無条件の喜びです。しかるに日本の社会状況、とりわけ消費の論理が、児童生徒のこの自然な学びの発動を妨げている。それどころか、学校現場に市場原理を導入することが教育を再生させるに効果的だとする施策が教育を追いつめていると思います。従って、学校が特に注意を払わなければならないことは、教育を消費の論理や比喩でで語らないことだと思います。「タイムラグなくお買い得なものを手に入れる」といったことが納得感である経済合理性を越えること。経済合理性だけが人を動機づける唯一のものだとする貧しい人間観を越えること。もしかするとこれは、逆に今、教育にしか出来ないことなのかもしれません。そう考えた上で、各校は「学ぶ喜び」を改めて生徒に実感させる仕掛けを創意工夫する必要があると思うのです。
 
 先週、全国高P連札幌大会に行ってきました。各校の実践事例発表や各種の講演等、大変意義深いものでしたが、その中で、アトラクションとして地元高校生の様々な発表がありました。その中で、最終日の最後に北広島高校の書道パフォーマンスが披露されました。全国から集まった保護者教職員が注目する中、10名くらいの生徒が、横10メートルほどの紙に一斉に何かを書き始めました。書き終わるまでの間、5分か8分か。私には長い時間に感じられました。5千人以上の人々が、私語一つなく期待をこめて見守る寛容な眼差しの中に、大人としての普遍的な教育の姿勢を見る思いがいたしました。